戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

標本は語る

昨日もご紹介しましたが、このごろ昭和初期の植物標本の整理をしています。
新聞も面白いのですが、挟んである植物だってもちろん面白いです^^



こちらは新聞に紫色がうつっていると思ったら、

ずばり「ムラサキ」という植物でした。
根を紫色の染料にするムラサキです。


かつて高貴な色として珍重されたムラサキの紫色。
じつはその自生地は、現在とても少なくなってしまっていて、
野生のものはめったに出会えない、幻の植物になっています。
ムラサキがはえるのは萱場のように手入れがされた草原ですので、
そうした場所が減ってしまったのが原因です。



このムラサキの標本のあとも、近くで採集したアツモリソウ、

ナバラソウと続きました。

いずれも草原を代表する貴重な植物です。


こんなすてきな花々が咲く、広々とした草原が80年前にあったのね・・・
(一応、場所は県内とだけお伝えしておきます)
うっとりと夢想してしまいます^^;



標本として確かな記録が残っているということが、
かつての環境を知る上で、いかに大切かということを教えてくれます。


さらに想像はふくらみます・・・
将来、身のまわりの自然はどんなふうに変わるのでしょう?
温暖化、外来植物の蔓延、田畑の耕作放棄・・・


色々なことが考えられますが、
とりあえず今のようすをきちんと記録しておこうと思います。
今つくっている標本を、いずれ見てくれる人が現れるかもしれませんし^^