戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

獣と乳 そして母性

日曜日の夕方、個人のお宅の天井裏から怪しげな声がする・・・
との情報が入りました。


外来生物ハクビシンだろうなと思い、捕獲道具を持って伺いました。
網で捕まえてみると、2匹の赤ん坊です。まだ目もあいていません・・・


「これがハクビシンの赤ん坊かぁ?」
なんとなく違和感がありました。


家主さんは「親のハクビシンを見た!」というし、
「そういうもんかなぁ、成長すれば、ちゃんとしたハクビシンになるんだろうな」と思い、
とりあえず連れ帰ることにしました。


しかし、気になった職員が調べてみると、なんと「テン」と判明・・・
尻尾の先が白いのが決めてです。
「どうしようー (+o+)」
野生動物ですから放獣しなければなりませんが、
この状態では、もう、どうしようもありません。


緊急措置として、やむを得ず、保護をすることに・・・
子ネコ用のミルクを3時間おきに与えたり、寒くないように湯たんぽで温めたり、
怒涛の日々が・・・



しかし、薬石効なく、2匹とも天国へ旅立ってしまいました。
仕方のないこととはいえ、やるせない気持ちです。


しかし、授乳をしてみると、哺乳類の原点を考えるよい機会でした。
皮膚からの分泌物が、「乳」ですから、起源は「汗」と言えます。


爬虫類は汗をかきません。
鳥類は羽繕いのために、油を分泌します。
哺乳類は、体温調節のために汗をかくようになり、
それを子育てにまで使うようになりました。


すごいなぁ 


今回の夏の企画展で紹介する羽毛恐竜は、こうした仕組みを持っていたのでしょうか?


テンの赤ん坊は、丸っこくて可愛いものでした。
「可愛い」という母性本能も、哺乳類の獲得した能力です。


子育て恐竜「マイアサウラ」は、こうした感情を持っていたのでしょうか?
今回の経験で学んだので、こうした点が気になるようになりました。


骨の化石からではわからないこともたくさんあります。
企画展では、こうした疑問をみんなで考えてみませんか?