戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

ミズバショウの実

春の戸隠の湿原を白く彩るミズバショウ。花のときはじっくりと見ますが、その実はどんなものかご存知ですか?
先日、芋井のかたがご自宅で育てているミズバショウの実をくださいました。

15cmほどの長さでぼつぼつがついた棍棒状です。
実はミズバショウの白い花のような部分は葉が白くなったものなんです。本当の花は真ん中の緑色の棒状の部分。しかもそれは、小さな花がたくさん集まってできています。

ですから、実になったときもこの棒状の表面にたくさんのタネがついています。ざっと数えると1000個近くありそうです。

この実をちょっと触れると、トウモロコシのように1つ1つがばらばらになります。中の芯はやわらかく、すかすかです。
雨の多いこの時期に、ばらばらになって水に落ち、水流に乗って新天地を目指すのかもしれません。

じつはミズバショウの実はクマの好物でもあります。戸隠の森林植物園でもこの時期、ミズバショウが踏み荒らされ、実がほとんど食べられてしまいます。
そのタネはおそらく、あまり消化されることなく、クマのお腹の中を通ってフンと一緒に出されるのでしょう。
というのも、標本用にタネを洗っていて気付いたのですが、水を含むとタネの周りからねばねばの物質が出て、手にまとわりついてくるんです。クマのお腹の中をするりと通り抜けるのには、もってこいですね。

ミズバショウは、里いもと同じ仲間なので、ミズバショウのぬるぬるは里いものぬるぬるに通じるものがあるかも、と思っていると、とたんに手がかゆくなってきました!

実から驚きの発見をいろいろさせていただきました。