戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

誓い通りに

前回誓った通り、

行ってきました 秋の戸隠山

(また、難所 蟻の塔渡りの前でUターンですが・・・^^;)

 

花の種類が少なく、紅葉には早いという

この半端な時期にあえて挑戦したのは

トガクシギクの探索をするためです!

 

大正5年に市内の女学校の、戸隠山での学校登山を引率した

校長で高山植物研究科の河野齢蔵によって発見されたトガクシギク。

乾いた山地のキク、リュウノウギクと

高山帯の岩場のキク、オオイワインチンとの雑種です。

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その学校は、現在共学になっていますが、

今でも戸隠の神鏡とトガクシギクをあしらったデザインが、

ブローチになっていたり、学校の壁に見られます。

 

じつそのトガクシギク

もう60年以上、戸隠での記録が絶えてしまっています。

浅間山系など他の場所では知られているのですが、

戸隠では絶滅したのではないかといううわさも・・・

本家の復活を目指して、とりあえずは現場確認です!

 

樹林帯をぬけて岩場ゾーンの入り口、五十間長屋近く。

 

 

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↑ 白い舌状花が長いリュウノウギク 

 

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↑ 舌状花がないオオイワインチン

 

両親が同じ岩壁にそろって咲いていることは確認できました。

これらの雑種 トガクシギクは

短い舌状花と切れ込みが深い葉が特徴です。

 

結局、トガクシギクには出会えませんでしたが、

登山道沿いで、最初の休憩ポイントにもなる五十間長屋ですので、

河野先生が見つけたのもこの辺りではないかと想像しました。

 

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そそり立つ岩壁が特徴の戸隠山

普通はすみわけている山地の植物と高山植物

岩場で出会ってしまい雑種をうみ、

さらに学校登山の場として明治時代から登られていたために、

研究者の目にとまりやすく、・・・

 

いろいろな偶然が重なってそんな物語がうまれたのかな~

と現場を見ながらしみじみ感じました。

 

復活を祈ってまた秋の登山をしようと思います。