戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

骨に気づかされること

ずいぶん寒くなりました

寒くなると腐敗が進まないので

自然頼りの骨格標本づくりをしている

当館では

この時期 解剖よりは

骨洗いや皮なめしにシフトします

 

先日もボランティアさんたちに

いろいろ洗ってもらったので

少しずつ整理を進めています

 

その中にハクビシンがいました

 

当時は駆除個体として持ち込まれ

まだ若い女の子だな~と思ったくらいで

外傷もないので

まったく気づきませんでしたが

 

骨折痕がありました

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歯は骨になる際に抜けてしまっただけですが

口の中にあたる部分の中央より右手

縦に隙間がありますが

本来はこの部分は左側のように隙間はありません

どうも骨折して

治癒する際にうまらず

くっつかなかったようです

 

目と目の間のくぼみの奥の骨は

右側にゆがんでいます

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腰骨もゆがんだ状態で治っていました

 

どうやらかつて車にでも

右側から轢かれたのでしょう

 

致命傷にはなりませんでしたが

かなりの大けがだったと思います

 

それでも事故後も

生き抜いた頑張り屋さんのようです

 

その努力の後は

怪我した部分だけでなく

 

肩甲骨

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(上:事故にあったハクビシン 下:無事故のタヌキ)

 

下顎

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(歯はぬけたままで撮影^^;   上:右 下:左)

(うすくなっていたり)

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(小さく 細くなったり)

などにもあらわれていました

 

 

しかし 彼女は 

街中の住宅の屋根裏に暮らし

 

屋根裏を汚してしまい

家主の怒りを買って

駆除されてしまったのでした

 

人と動物の関係がうまくいっていない

証拠の一つでもあるのかもしれません

 

かつて野生動物と人の暮らしは

里山によって分けられていたのですが

 

ここ50年くらいで 人の生活がかわり

里山がなくなると その境界は消え

人も動物たちも同じ場所に

暮らすことになりました

 

すると・・・考えさせられます

 

しかもハクビシン

かつては天然記念物で保護動物

いまでは外来生物で駆除動物・・・

 

本当にいろいろ考えさせられる

骨格標本となりました