戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

しし土手を見る

飯縄山山麓に、イノシシを防ぐための土手がありました。

「しし土手」とか「しし垣」と呼ばれるものです。

江戸時代の前期に築かれたもの、と考えられています。

山側の土を1mほど掘り下げ、それを積み上げて土手を築いたそうです。


今は「土手」しか残っていませんが、当時は、横木をわたして、

獣が越えられない「壁」としていたそうです。

延々と4kmほど続きます。



「壁」で田畑を荒らす獣の侵入を防いだのです。

某国の大統領と同じ発想です。


ちょっと訳があって、画像をおさめに行きました。

戸隠村時代、文化財保護の仕事もしていたので、

この土手に沿って歩きました。

もう、20年も前のことになります。


相変わらず「しし土手」が残っていました…

最近、イノシシやシカが増え、農業被害が問題になっています。

電気柵での対応がなされていますが、

地域全体を害獣から守る!という知恵がこの「土手」にはこめられています。

そして、しし土手の外側は、薪炭林として手入れを加えていました。



訪れる人もいない「しし土手」ですが、

ここに住むためには、知恵と努力が必要なのだ、ということを雄弁に語っていました。