戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

おとしもの

今日、職員が「道で拾ったよ」と持ってきたのは、これ。

葉っぱを小さくたたんで丸めたもの。
この時期になると、林のわきの道端などでたくさん落ちているのを見かけることがあります。
戸隠では「カラスのお土産」と呼ばれているそうです。


几帳面にたたまれた葉(お土産の包み)を開いてみると、
一番奥に大事にしまわれていたのは、、、、

1粒の卵。


その製作者は、
首が長い昆虫、その名もオトシブミ(落とし文)。

1cmにも満たない小さな体で葉を折りたたみ、くるくると丸めてしまうのです。
卵にとっては、敵に狙われることもない居心地のよいゆりかご。
しかも葉は成虫になるための餌でもあるのですから、
食住を親に完全に用意してもらっている、
恵まれた子ども時代を過ごす昆虫と言えるでしょう。


しかし、
そんなしっかりもののお母さんでも、うっかりしてしまったのは
その葉が落ちる先。
この頃は枝が道路に張り出していることもよくあるので、
今回のように乾いたアスファルトの上に落としてしまうこともあるのです。
熱さで葉が干からびてしまうこともあれば、もちろん車にひかれてしまうことも。

自分で落ちる先を選べない卵にとっては
「お母さん、なんとかしてよ〜〜」
とぼやきたくなることでしょう…
やっぱり生き物の世界はそんなに甘くなかったようです…