戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

山里文化

先日近所のかたに、博物館のある柵(しがらみ)地域の文化をものがたる、
面白いものを紹介していただきました。

小屋に立てかけてあった丸木の中に数本、細かな切れ目が入れてあるものがあります。
じつはこの木、ウルシの木なのです。
柵地域では40年ぐらい前まで、山に植えてあった木から漆(うるし)をかいていました。
その文化が今は絶え、木も伐採されてしまったのですが、
何かに使おうと思ったのか、丸木としてとっておいたかたがいらしたのです。
漆をとった部分だけがかたくなっていて、樹液の強力な防虫・防腐作用がうかがわれます。


実際に、ウルシの木が野生化したものも近くで見ることができました。


また、他にもカジノキが山裾や道路際などにたくさん生えているところも
教えていただきました。

(↑大きな切れ込みのある、毛深い葉っぱが特徴です。)
この木の枝を煮詰めて、和紙の材料にするのです。
昔はこの地域は、品質の良い和紙の産地として知られていたそうです。
草木染めの名付け親、山崎斌(あきら)氏も和紙を染めて愛用していたとか。


これらのことを教えて下さったかたは、ご近所にこの春から移り住んで来られたかたで、
イヌの散歩の途中で見つけたとか。
地域の文化や産業の痕跡が、実はまだまだ風景の中に隠れていて、
それらを今見つけて記録しておくことは、とても大事なのでは、と
しみじみ感じました。