戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

嵐の前に

勢力の強い大型の台風が接近中です。

防災無線でも、何度も注意が呼びかけられています。

館の周りも、飛びそうなものをできるだけ移動させました。

 

もちろん彼も屋内避難です。

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普段から雨があたらない場所ですが、

すでにトレードマークの みの や帽子はだいぶ傷んでいます。

これを機に、新調してあげようかという話も・・・

 

さて、少し前の話ですが、ご紹介しそびれていた、

牧場の調査でのできごとを書かせていただきます。

 

すでに紅葉が始まり、秋の花、トリカブトがきれいでした。

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いわずと知れた強烈な毒草です。

この花、とても変わっていて名前の由来になった、

帽子(かぶと)形のものも含めて、

見えているのは(おしべの束以外は)正確には がく です。

 

帽子をとると、中には

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こんな不思議な構造のものが2つずつ隠されていて、

これが本当の花弁(花びら)です。

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くるりと巻いた筒の先に蜜が入っています。

ハチがもぐりこみ、ストローを伸ばして蜜をすいます。

そのとき、ハチのおなかに花粉がつくというしくみ。

なかなか凝っています。

 

調査中も大型のマルハナバチがせっせと花をまわっていました。

思わず、蜜の味を確かめたくなったのですが、

ハチは良くても人はダメかもしれないので、

吸うのはやめておきました^^;

 

そのときふと目にとまったトリカブトの実

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かじりつく、芋虫の姿があります!

花の蜜はハチを誘うためのものですから、

毒はなさそうな印象ですが、

実をかじってしまうとは、トリカブトにとっても一大事。

 

調べてみると、本州にはトリカブトを食草にするガの仲間が2種、

マダラキンウワバ と アカキンウワバ が知られていました。

 

その幼虫の姿を紹介している図鑑やネット画像が見つからず、

どちらかはまだ不明です。

 

それにしても、なぜよりによってトリカブトを食べるのでしょう?

体に毒をためることができる、など何かメリットがあるのでしょうか?

 

どんよりした雨雲に、明日の天気を心配しながら、

ちょっとした生き物の世界のフシギをご紹介してみました。

 

今回の台風では、大きな被害がありませんように・・・

(博物館は通常営業です。せっかくの三連休なのに残念・・・!)