戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

ずっといたけど新人さん?

県内では山中の沢沿いなどに野生も見られるワサビ。

その近い仲間に、ユリワサビがあります。

ワサビよりはずっと小型です。

 

戸隠でも奥社の近くの林内には普通に生えているもので、

春にワサビに似た白い花がきれいです。

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これが、最近になって、

別種のオオユリワサビらしい、ということになりました。

 

もともとオオユリワサビは福岡県の沖ノ島

1935年に発見され、この島の固有種とされていました。

しかし1963年に確認されたのを最後に見られなくなり、

絶滅したものと長らく考えられていました。

(ちなみに沖ノ島は2017年に世界遺産に登録された「神宿る島」です)

 

それが、じつは本州の日本海側にありふれたものだった

ということがわかったのが2000年のこと。

絶滅種から、急に普通種に^^;

 

ユリワサビとの違いは、全体に大型であることの他に、

春の開花の後、夏には地上部が枯れてしまうこと。

カタクリフクジュソウと同じく、

いわゆるスプリングエフェメラルの生活を送ります。

 

そこでこの春、戸隠の自生地に通って、

そのようすを確認してみました。

 

先の開花の写真は5月5日のもの。

2週間たつと、花の柄が倒れていました。

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↑ 5月18日

 

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↑ 5月28日

さらに10日経過。

花が終わって実になっていました。まだ葉はあります。

 

それから10日ぐらいずつ通っていると、

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↑ 6月24日

6月末には葉がすっかり枯れて、実が熟していました。

 

こんな姿です。

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かびているのかと思ったら、大量の毛でした・・・

 

そして先日、7月になってから確認すると、

茎もほぼ枯れてなくなり、実だけが地面の上に落ちていました。

 

これで戸隠のものは、オオユリワサビと確定!

戸隠のニューフェイスのご紹介がようやくかないました。