戸隠地質化石博物館の日記

博物館周辺での日々のできごとを、地質、植物、動物などの各担当者が書いていく日記です。

小さな探検

昨日は個人的に休みだったのですが、

裾花川沿いのとある場所の探検に仲間と行ってきました。

f:id:Naturalhistory:20200716093623j:plain

2段に落ちる、かっこいい滝が見られます。

案内者曰く、先日の大雨の影響でたまっていた土砂が流れ、

歩きやすくなったそうです^^;

 

f:id:Naturalhistory:20200716094358j:plain

一段上の滝つぼです。

マイナスイオンが気持ちいい!!

 

f:id:Naturalhistory:20200716094317j:plain

滝の裏側には、お不動様も祀られていました。

さすがに水量はまだ多く、滝行をするには危険と判断。

しかし、こんな素晴らしい場所が、

市街地にほど近い場所にあったとは、驚きました。

 

じつはこの場所、100年以上前に地質学者、保科五無斉先生が

岩石標本の採集を行った場所です。

彼の採集日と同じ日に訪れた、ということもあり、

途中の沢沿いで石の採集を試みました。

 

気になる粘土層も見られました。

f:id:Naturalhistory:20200716101216j:plain

 

これらの石や地層は何を語ってくれるのでしょう?

今日の学芸員の鑑定結果は・・・

 

滝行の際に採った、お土産の石を見せていただきました。

f:id:Naturalhistory:20200717123741j:plain

全体的に白っぽい岩で、火山が噴火した時にできたもの…

(二酸化ケイ素の成分が多いので、酸性岩とも呼びます)

石英や長石、角閃石、黒雲母の結晶、軽石などが含まれています。

岩質としては、流紋岩に区別されます。

一部には、熱水変質を受けて、緑色になったものも見られました。

(緑色凝灰岩:グリーンタフと考える人もいます)

溶岩もあれば、凝灰岩もあります。

 

裾花川で、これらの岩が厚く堆積しています。

約700万年前の海底火山の噴出物になります。

 

その証拠に、海底にたまった泥岩の破片も含まれていました。

右上の黒っぽいもの2個が泥岩…

f:id:Naturalhistory:20200717124631j:plain

 

右下のものは、緑色をおびた黒っぽい凝灰岩、粘土化が進んでいました。

 

お皿の上のネチャネチャしたものも、その仲間です…

おそらく、水の影響を受けて、粘土化が進んだのだろう、と思っています。

 

これに水をかけて洗ってみました。

 

f:id:Naturalhistory:20200717132849j:plain

 

凝灰岩のかけらや泥岩のかけらなども含まれています。

 

ぐちゃぐちゃには砕けているので、断層でもまれているのかもしれません。

断層粘土と呼んでもよいかも…

 

海底火山の噴火で、いろいろな種類の岩石ができ、

その後の変質や断層の動きで隆起し、水のしみこみもあって、

一部では粘土化が進行…

 

こんなストーリーが、お土産の石から読み解くことができました。

 

長野盆地の西側のへりの山をつくる「裾花凝灰岩層」…

山崎直方博士が、1897年に命名しました。

 

変化に富んだ地層で、地質学者が調べるには、なかなか難しい地層でもあります。

この地層は、石油を貯えていたり、

粘土化が進んだものは、松代焼の釉薬(うわぐすり)ともなった、と言われます。

ガラスや磨き砂の原料にもなっていた、との記録があります。

 

遠くに旅した際、長野にかえって来るとき、この白い崖が遠くからみえると、

「ああっ~ようやく長野についたなぁ」とホッとするときがあります。

 

なかなか、面白いものをいただきました。

今度、滝にもいってみようっと!